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はじめに こんにちは。日本橋室町で開業している社会保険労務士の田中 寧子(たなかやすこ)です。

最近は、固定残業代制を活用して毎月安定的に従業員に給与が支払われるようにしている会社様が多いと思っております。実際、弊所のお客様の会社様でも、2月や8月は労働日数が少ない問題があり、給与の支払い額が安定せず、従業員に安定した生活を保障したいとの社長の願いから、固定残業代制を導入した会社様もあります。社長が、「従業員がすごく喜んでいた!よかった!」という、社長が喜んでいたのが印象的な出来事でした。

このページは、固定残業代制について、メリットばかりでなく、デメリットもあり、さらに運用にあたっての注意点があるので解説していきます。

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企業の人事労務管理を強化するための固定残業代の活用法

固定残業時間の上限

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    原則として1か月45時間、1年間で360時間

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    時間外労働が年720時間以内

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    時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満

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    時間外労働と休⽇労働の合計について、「2か⽉平均」「3か⽉平均」「4か⽉平均」「5か⽉平均」「6か⽉平均」が全て1⽉当たり80時間以内

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    時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは、年6か⽉が限度

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    ※上限規制を守らないと、最大、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。(労働基準法第119条に基づく罰則)

固定残業代を正しく理解し、実践することは企業にとって非常に重要です。このシステムを導入することで、適切な労働時間管理が可能となり、従業員の働き方を見直すきっかけにもなります。ただし、誤った運用は労働基準法違反につながるリスクも伴います。本ページでは、固定残業代の定義から運用に関する注意点、さらには企業が得られるメリットとデメリットを詳しく解説します。
労働基準法が求める固定残業代の基準

固定残業代制のメリット

自社にメリットがあるか確認しよう!

  • Point 01

    残業代の計算がしやすい

    固定残業代制なら、勤怠実績を超えない限り残業代が一定額で所得税や社会保険料の計算も安定するため、給与計算の負担が軽減されます。人件費が見通しやすくなることで、企業の資金繰りや利益計画にも好影響をもたらします。

  • Point 02

    業務効率の改善につながる

    固定残業代制では、残業が発生しなくても一定の残業代が支給されるため、『残業を減らすと得』という意識が生まれます。これにより業務効率の向上やスキルアップ、定着率向上が促され、職場全体の生産性が向上します。また、残業をする従業員が減れば光熱費などの間接コストの削減も期待できます。

  • Point 03

    社員の生活の安定に寄与する

    固定残業代制は、残業時間が少なくても給与が一定で、繁忙期・閑散期の差がある業種では収入が安定します。通常制度では閑散期に収入が減りますが、固定残業で年間を通じて生活水準を維持できます。また、残業が少なければプライベートも充実し、ワークライフバランスの向上も期待できます。

一方、デメリットも・・・

デメリット1:経済的損失を生じる可能性がある。

固定残業代制では、残業が発生しない月にも「固定」の残業代を支払う必要があるため、従業員によっては実際の業務時間以上に支出が生じ、人件費が高くなるリスクがあります。この点は、特に残業の少ない職場では顕著で、企業側にとっては「不要な残業代支出」として負担になり得ます。

さらに、固定残業時間を超える残業があった場合は、追加の割増賃金を支払わなければならず、コストがさらに膨らむ可能性があります。

また、この制度は正しく運用されないと、「残業代はすでに含まれているから追加不要」や「固定残業時間分は働くのが当たり前」などの誤解を招きやすく、長時間労働やサービス残業の温床になりかねません。こうした誤認は、労務トラブルや法令違反のリスクにもつながるため、企業側には特に慎重な運用と透明な制度設計・周知が求められます


デメリット2:固定残業時間分働かなければならないとの風潮が生まれ、無駄な長時間労働と成り得る

固定残業代制度を正確に理解していないと、「固定残業時間分は必ず残業しなければならないもの」と誤認され、結果として長時間労働を助長する恐れがあります。たとえば、管理職や従業員が制度の本質を知らず、固定残業時間を最低限の勤務時間と捉えるような風潮が社内に広がると、働き方に歪みや疲弊が生じかねません。

一方で、管理者自らが正しく制度を理解し、適切に社員へ指導・教育を行えば、このような誤解や悪影響を未然に防ぐことができます。制度導入時や採用時に、口頭や書面による丁寧な説明をしたり、労働条件や固定残業代の金額・時間数・超過時の対応など理解の確認と合意を得ることが重要です。給与明細や就業規則・雇用契約書にも明示することで、従業員が自身の労働条件を客観的に把握できるようにするのが望ましい運用です。

制度の透明性と丁寧なコミュニケーションにより、従業員がこの制度をネガティブに捉えるリスクは低減され、また法的なトラブルの回避にもつながります。


メリットも大きいですが、デメリットも生まれてくる制度ですので、会社に合うかの見極めと、導入の際は、管理者自らが、正しく制度を理解して、社員教育を徹底し、正しく運用していく必要があります。

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事例紹介:成功と失敗から学ぶ固定残業代

雇用契約書における記載ポイント

1. 基本給と固定残業代の明確な区分をすること

基本給と固定残業代を切り分けて記載することで、どちらが残業代に該当するのかを明示する必要があります。

例:「基本給:24万円/固定残業代:6万円(30時間分)」のように記すのが望ましいです。まるめて記載すると固定残業代制と認められず、別途残業代の未払い精算の必要性が出てくるので要注意です。


2. 名称と趣旨の明確化

「固定残業手当」「固定時間外手当」など、割増賃金であることがわかる名称を使うことが安全です。曖昧な名称(例:「業務手当」)を用いることで誤解や法的トラブルが起きる可能性があります


3. 対象となる割増賃金の範囲の明示

固定残業代がどのような残業に対する対価か(法定外残業のみ?深夜・休日も含む?)を明確に書いておくと、あとで争いになりにくくなります。


4. 差額精算の取り決め

固定残業時間を超えた際には、法定通りに割増賃金を支払い、固定残業代と差額精算する旨を記載することが重要です。


5. 最低賃金を下回らないように配慮

固定残業代が最低賃金の割増率を下回らないように計算し、契約書にその旨を説明または裏付けておく必要があります。


6. 就業規則との整合性

雇用契約書の内容(名称、金額、時間数など)は、就業規則や賃金規程と一致させることが必要です。不整合があるとどちらが優先されるかわからず、トラブルの原因になります。


7. 丁寧な説明と理解の確認 契約

締結前に、固定残業制度の仕組みや差額精算の流れなどについて、従業員に丁寧に説明し、理解しているか確認するプロセスを設けることが推奨されています。

固定残業代の計算方法(2通り)

計算方法①【手当型】:基本給が決まっており、固定残業代を上乗せで支給する場合

基本給に固定残業代を加算する方法より一般的でシンプルな計算方法

固定残業代 = 1時間あたりの基礎賃金 × 固定残業時間 × 割増率

※1時間あたりの基礎賃金は、「給与総額÷月平均所定労働時間」で求めますが、

 先に、月平均所定労働時間「(365日-年間休日)×1日の所定労働時間÷12か月」を求めておきます。


手当型の特徴は、給与とは別に残業代を記載することで、残業時間の有無によらず手当を一定額もらえることで、固定残業代をもらっているという実感ができます。また、残業時間によらず手当が一定額支給されるので、従業員が残業を避けようと自発的に業務の効率化を図るようになり、生産性の向上が期待できます。そして、効率化のためのスキルアップが図られます。また、法的観点から、基本給と固定残業を明確に分けていることで、固定残業制を誤解がうまれにくく、安心して、正しく制度を運用できます。


計算方法②【組込型】:固定残業を含むベース給与を基本給と固定残業に分割する方法

ベース給与が最初に決まっていて、そこから固定残業代を分離する方法計算式。

つまり、基本給と割増賃金部分を明確に判別できるようにする必要があります。

固定残業代 = 総支給額 ÷ {月平均所定労働時間 + (固定残業時間 × 1.25)} × 固定残業時間 × 1.25

月平均所定労働時間は、「(365日-年間休日)×1日の所定労働時間÷12か月」


組込型の特徴は、基本給に残業代が組み込まれているので、多少ですが、余分な残業を防げるメリットがあります。基本給に組み込まれることで、従業員は固定残業代を受け取っているという認識が薄くなり、せっかく支給しても、もったいない側面もあります。また、これまで手当型の固定残業代を支払っていた企業が、固定残業代の削減しようと基本給組込型に切り替える場合は、従業員の給与が下がることもあるため不利益な変更となり、注意が必要です。労働条件の改悪は、明確な合理的理由がある場合のみしか許されないためです。さらに、基本給と固定残業代の明確区分がなされていない場合、固定残業代と認められなかった場合のリスクもありますので、運用には細心の注意が要されます。

雇用保険と固定残業代の関係
固定残業代の見直しポイントと対策

固定残業代の制度は導入後、企業の経営環境や労働条件の変化に応じて見直しが必要になります。特に、労働市場や経済状況が変動する中で、固定残業代の額が適切であるかどうかを定期的に確認することが重要です。制度の運用を開始した際に設定した基準が、数年後には状況にそぐわなくなることは十分に考えられます。


例えば、他の企業の賃金水準の上昇や新たな法律が施行されることは、既存の固定残業代の適用に影響を及ぼす可能性があります。このように、固定残業代制度が企業にとって有効に機能しているかどうかを定期的にチェックし、必要に応じて見直しを行うことは、労働者のモチベーションや企業の業績に直結します。

見直しのタイミングとしては、年次評価や企業の業績評価のタイミング、もしくは新たな労働契約締結の際が考えられます。また、社内の人事制度に変更があった際や、法改正があった場合にも、固定残業代のルールを再確認することが必要です。特に、具体的な指標としては、従業員の労働時間の実態や評価面談でのフィードバックを参考にするのがよいでしょう。

具体的な対策としては、まず社員からのフィードバックをしっかりと収集し、その声を基に見直し計画を立案します。さらに、見直しの際には、ただ額面を変更するのではなく、制度全体の透明性や公正性を確保することが不可欠です。このため、固定残業代の運用に関連するポリシーやガイドラインを社内で明確にし、全従業員に周知徹底することが求められます。労働時間に関するデータを定量的に分析することで、適切な見直しを行うことが可能となります。

また、必要に応じて社内研修を実施し、企業全体での理解と共有を図ることも重要です。このように、固定残業代制度は導入後も環境によって柔軟に対応することが求められるため、定期的な見直しを怠らないことが企業運営の安定に繋がります。固定残業代を正しく運用していくためには、継続した情報収集と適切なタイミングでの見直しがカギとなります。


どんな制度でも同じことが言えますが、昨今では、最低賃金がどんどんアップしてきていたり、労働法の改正があったり、労働市場の動きも盛んですので、一度制度を導入したらそのままにせず、定期的に確認して、必要があれば見直していきましょう。

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固定残業代制度は企業において多くのメリットをもたらしますが、同時に法令遵守の観点から多くの疑問や悩みを生じさせることもあります。特に、固定残業代がいかに実務で適切に運用されるべきか、また、法令に基づいているかどうかを確認することは、企業にとって非常に重要なポイントです。このような疑問を解消するためには、専門家の意見を仰ぐことが不可欠です。社労士は、労働基準法の解釈や実務上の注意点に精通しており、企業が適正に固定残業代を運用できるようサポートします。

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