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はじめに

東京の社会保険労務士の田中 寧子(たなかやすこ)です。

月給者の基本的な残業代の計算についてよく質問があります。最も多い質問は、「残業代計算の元となる時給の単価って毎月変わるのでしょうか?」

という、残業計算として核の部分の質問がとても多いです。いまや、残業は、時給単価に割増率1.25倍、休日出勤は、時給単価に割増率1.35倍すればよいのだ!と、理解されている方が多いのですが、時給単価が分からないため、正しい残業代が求められないようです。このページでは、残業代の元となる時給の単価の求め方に重点を置いて、その他、残業代計算に関わる、周辺の重要事項について解説していきます。

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2. 労働基準法における残業の定義

1. 残業代計算のポイント

残業代計算の決まり事

  • Point 01

    計算の基礎に含める手当/含めない手当

    残業代の計算では、基礎となる賃金に含める項目と除外する項目があります。基本給や職務手当などは含めますが、家族手当・通勤手当など一定の手当は除外されます。これは労基法で基礎賃金の範囲が明確に定められているためです。

  • Point 02

    月平均所定労働時間

    月給者の残業単価は、まず月給から残業代の計算基礎に含める手当を合計し、月平均所定労働時間で割って1時間あたりの単価を算出します。

    これに割増率(通常25%、深夜25%、休日35%など)を掛け、残業時間数を乗じて計算します。

  • Point 03

    端数処理方法は切上げ

    残業代の計算で出る端数(1円未満)は、労働基準法施行規則により切上げ処理を行います。例えば計算結果が1,000.4円なら1,001円として支払います。これは労働者保護のためで、切り捨てや四捨五入は認められません。わずかな額でも労働の対価を正しく払うことが重要です。

細かいことだけれども重要事項

2. 残業代計算の基礎から除外される賃金(限定列挙)

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    家族手当

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    通勤手当

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    別居手当

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    子女教育手当

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    住宅手当

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    臨時に支払われた賃金

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    1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金

家族手当・住宅手当・通勤手当に関しては、実態で判断されるため除外されないケースもあります。 たとえば家族手当の場合、全員一律に支給されているものに関しては、基礎賃金に含みます住宅手当も従業員に一律に支給している場合にも基礎賃金に含みます通勤手当も同じように、一定の距離の場合に一律に支給されているような場合においては、基礎賃金に含まれます

「1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金」には賞与も当てはまりますが、賞与は基本的に基礎賃金から除かれます

しかし、「年俸制」は注意が必要です。 年俸額を14で割り、2カ月分を賞与としているような場合は、年俸額が確定しているため、ボーナスに当たる部分も基礎賃金に含まれます。

3. 月給の残業単価計算方法

ポイント)月平均所定労働時間を計算に使います。


1カ月の日数は毎月異なります。31日の月もあれば30日の月もありますし、うるう年であれば2月は29日まであります。 そのため、対象月の所定労働時間だけで計算してしまうと、月毎で単価が変わってしまい、正しい計算結果が出せません。 平均所定労働時間はその年の暦日数と年間休日から算出しますので、1年を通して一定の単価で計算できるのです。


皆様の会社様は、年間スケジュール表を作成していますか。

例)土日祝の会社様ですと、年間所定労働日数が240日、所定休日が125日(閏年126日)となります。

  毎月、年間平均で20日出勤。1日8時間勤務

  年間を通して月平均の一か月所定労働時間は、20日×8時間=160時間月平均所定労働時間


★(計算例)

基本給のみで手当てがなく280,000円の給与の場合

  280,000÷160時間1,750円(時給単価)

  普通残業   1,750円×1.25=2187.5円⇒2,188円(端数切上げ)

  法定休日出勤 1,750円×1.35=2362.5円⇒2,363円(端数切上げ)

 


・通勤手当が10,000円支払われていたら

  計算の基礎として290,000円とせず、

  280,000÷160時間1,750円(時給単価)

⇒通勤手当は、計算の基礎から除外するため。

  普通残業   1,750円×1.25=2187.5円⇒2,188円(端数切上げ)   

  法定休日出勤 1,750円×1.35=2362.5円⇒2,363円(端数切上げ)


・役職手当が10,000円支払われていた場合

  290,000÷160時間1812.5円(時給単価)

⇒役職手当は、計算の基礎から除外できないため。

  普通残業   1812.5円×1.25=2265.625円⇒2,266円(端数切上げ)

  法定休日出勤 1812.5円1×1.35=2446.875円⇒2,447円(端数切上げ)


時給単価は、月平均所定労働時間を用いることにより、年間を通して一律となり、また、計算の基礎となる含める手当、含めない手当を正しく計上することにより、正しい残業代を求めることができます。

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4. 時間外労働と特別手当の違い

4. 固定残業代制(みなし残業代制)

固定残業代制(みなし残業代制)とは、企業が一定時間の残業を想定して、あらかじめ月給に固定分の残業代を含めて支払う制度です。

固定残業代制における残業代単価は、

固定残業代=(総給与額÷月平均所定労働時間)×固定残業時間×1.25

で計算可能です。


なお、例えば、月30時間の固定残業がある従業員が、1カ月に40時間の残業をおこなった場合については、固定残業時間から超過している10時間については上記の計算式から残業代単価を計算し、従業員に対して超過分の残業手当を支払う必要があります


運用のポイントとして、基本給と、固定残業代は明確に分けて雇用契約書(労働条件通知書)や、就業規則に記載しましょう。まるめて記載をすると、給与が多く見えて採用としてはメリットととらえられていることがありますが、基本給と固定残業代を分けて記載をしないと、固定残業代制度が無効と判断されることがあり、その場合、残業代を別途請求されるリスクが生じますので、しっかり分けて記載しましょう。

以下、判例を挙げておきます。


(判例)

・高知県観光事件(最二小判平6.6.13):固定残業代の無効性を争点とした事例で、基本給と残業代の区分が明確でない場合は無効となる可能性が指摘されています。

・テックジャパン事件(最一小判平24.3.8):固定残業代の導入要件について、明確区分性や対価性が必要であるとされた判決です。

・国際自動車事件(最一小判令和2.3.30):タクシー業界において固定残業代の計算方法が争点となり、残業代として適切に支払われていない場合は無効とされました。

5. フレックスタイム制の場合

フレックスタイム制とは、一定の清算期間(おおむね1カ月)の中で、従業員が始業時間や終業時間を自由に決めて勤務できる勤務形態です。 フレックスタイム制の場合は、清算期間内の所定労働時間数から超過している分の労働時間に対して残業手当を支払います。残業代単価の計算方法は月給制などの場合と同じく、「基礎賃金 ÷ 月平均所定労働時間」です。


ただし、清算期間が1カ月を超える場合、労働基準法では原則として、月における週平均労働時間が50時間を超える週があってはならないとしています。 清算期間が1カ月を超える場合については、清算期間内の合計勤務時間が所定労働時間内であった場合も、週の合計労働時間が50時間を超える場合には、超過時間分について残業手当の支払いが必要になるため注意しましょう。

5. 給与明細の見方とチェックポイント

6.日給制の場合

日給制とは、1日単位で決められた給与を支払う仕組みです。

日給制の場合も、法定労働時間を超えた労働に対しては残業手当を支払わなければなりません。

日給制における残業代単価は「日給 ÷ 所定労働時間」で算出できます。

この残業代単価に、割増率と残業時間をかけて残業手当を支給しましょう。

7. インセンティブにも残業代計算をお忘れずに。

インセンティブ(歩合給や業績給)が支給される場合、残業代の計算には注意が必要です。以下のポイントが考慮されます


インセンティブの残業代計算の取り扱いとして、インセンティブも割増賃金の計算基礎に含まれるとされています。これにより、インセンティブが変動する月は残業単価も変動することになります。



(計算方法)

インセンティブ金額 ÷ 月の総労働時間 × 0.25 (割増率) =インセンティブの残業代単価

インセンティブの残業代単価×実際の残業時間=インセンティブの残業代


例: インセンティブが20,000円で、月200時間働いた場合、20,000 ÷ 200 × 0.25 = 25円

  残業時間が30時間でしたら、25円×30時間=750円加算されます。


インセンティブが不明確な場合 インセンティブの算出方法や支給基準が曖昧だと、労働者との間でトラブルになる可能性があります。給与明細に詳細を明記することが推奨されます。

8. お気軽に、お問い合わせください!

  • 7. お問い合わせで安心を手に入れよう
  • 7. お問い合わせで安心を手に入れよう

残業代に関する疑問や不安を抱える給与計算担当者は多いでしょう。給与明細に記載された残業代の計算がわからなかったり、就業規則の不備等の理由から、疑問を抱くことが少なくありません。そんな時、どうすれば良いのでしょうか?

まず、社労士など労働法に精通した専門家に相談するのが一つの方法です。社労士は、労働基準法に基づいた正しい知識を持ち、貴社のケースに応じた適切なアドバイスを提供します。実際に、企業が労働法に違反している場合もあるため、自己判断で解決しようとするのはリスクがあります。

残業代計算はただ、1.25や1.35を掛ければよいのだ!と、軽いものではなく、誤った計算を続けていくと、未払い残業が発生している場合、従業員の生活に不利益を与えていることはもちろん、未払い残業代の清算で過去数年分全員遡って支払い命令がでると、何十万円、何百万円と大きな損害が発生します。残業代計算は、計算間違いをしやすいので、早めの対応で、安心して毎月の給与支払いを進めていくと良いでしょう。


気になる際は、ぜひ、ご相談くださいませ。

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