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はじめに 東京 日本橋室町で開業している社会保険労務士の田中 寧子(たなかやすこ)です。

いよいよ今年も最低賃金について話題になる時期になりました。

最低賃金が上がると聞いて、「これで少し楽になるかも」とほっとする人もいれば、「この先、やっていけるだろうか」と不安を感じる人もいます。

つまり働く人とお店や会社を支える人、それぞれの立場に、さまざまな思いが広がっています。

事業主にとっては「経営の見直し」を迫る現実でもあります。

喜びと不安が交錯するこの変化は、社会全体にどのような影響をもたらすか解説いたします。

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最低賃金法とは

最低賃金法とは

労働者が健康で文化的な生活を営めるよう、賃金の最低額を国が保障するための法律(昭和34年制定)です。すべての労働者・使用者に適用されます。


経営者が知っておくべき最低賃金法の基本

1. 全ての従業員が対象 正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員も含め、雇用形態を問わず最低賃金が適用されます。

2. 最低賃金を下回る契約は無効 仮に「時給1,200円」で契約していても、その地域の最低賃金が1,226円なら 自動的に1,226円とみなされます。

3. 罰則リスク 最低賃金を下回る賃金を支払った場合、50万円以下の罰金の対象となり、労基署の是正勧告や指導が入る可能性があります。

4. 注意点 :月給制社員も「月給 ÷ 所定労働時間」で時給換算し、最低賃金を下回っていないか確認が必要。

     手当や交通費の一部は最低賃金の計算に含められないため要注意。


経営者にとって最低賃金法は、従業員の権利を守るだけでなく、違反リスクから会社を守る法律です。

毎年の改定を必ず確認し、給与体系の見直しを行うことが重要です。

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働き方改革と新しい給与制度

初の、全都道府県1000円越え!

  時給 上げ幅   時給 上げ幅
北海道 1075 65 滋賀 1080 63
青森 1029 76 京都 1122 64
岩手 1031 79 大阪 1177 63
宮城 1038 65 兵庫 1116 64
秋田 1031 80 奈良 1051 65
山形 1032 77 和歌山 1045 65
福島 1033 78 鳥取 1030 73
茨城 1074 69 島根 1033 71
栃木 1068 64 岡山 1047 65
群馬 1063 78 広島 1085 65
埼玉 1141 63 山口 1043 64
千葉 1140 64 徳島 1046 66
東京 1226 63 香川 1036 66
神奈川 1225 63 愛媛 1033 77
新潟 1050 65 高知 1023 71
富山 1062 64 福岡 1057 65
石川 1054 70 佐賀 1030 74
福井 1053 69 長崎 1031 78
山梨 1052 64 熊本 1034 82
長野 1061 63 大分 1035 81
岐阜 1065 64 宮崎 1023 71
静岡 1097 63 鹿児島 1026 73
愛知 1140 63 沖縄 1023 71
三重 1087 64 全国加重平均 1121 66

【ポイント】

①東京が、1226円が最も高く、高知、宮崎、沖縄が1023円と最も低い。

②最大の引き上げ幅は熊本の82円アップ。

③この引き上げは、地域間で競い合った傾向が強い。

 隣県との賃金格差は人口流出を招きかねないという判断があったようです。

④当初1,118円を想定していたが、国の目安を上回った。

⑤政府は、20年代に全国平均1500円を目指している。

⑥新たな最低賃金の発効は例年10月からだが、こういった大幅な引き上げ後、年末を迎えると「年収の壁」を意識した就業調整にできないため、秋田、福島、群馬、徳島、大分、熊本2026年に発効する。

労働法による給与制度の重要性

最低賃金アップにともなう、起こりうる問題点

過去最大の引き上げ率による影響

  • Point 01

    バイトと正社員の時給逆転現象

    最低賃金の引き上げにより、従来は時給換算で高かった正社員給与を、アルバイトの時給が上回る「逆転現象」が生じています。特に低賃金水準の正社員では顕著で、待遇改善や賃金体系の見直しが企業課題となっています。

  • Point 02

    年収の壁による働き控え

    最低賃金の上昇により、パートやアルバイトの収入が増える一方で、年収の「106万円」「130万円」などの壁を超えると社会保険料の負担が発生します。そのため手取りが減少し、勤務時間を抑える「働き控え」が起きやすくなっています。逆に、正社員に負担が増えてきてしまします。

  • Point 03

    採用手控え・自動化の動き

    最低賃金の上昇は人件費負担を増大させ、企業は採用を控える動きを強めています。その結果、省人化やコスト削減を目的に、セルフレジやAI導入など自動化投資が加速し、雇用環境や働き方に影響を及ぼしています。

最低賃金法違反をしないために

最低賃金発効に向けてのチェックリスト

  • check_box

    自社所在地の 地域別最低賃金額および、

    特定産業に該当する場合、産業別最低賃金も確認しましょう

  • check_box

    月給者は「月給 ÷ 所定労働時間」で 時給換算して確認しているか。

    日給、時給者も確認しましょう。

  • check_box

    最低賃金に含める手当、含めない手当を踏まえて、最低賃金より時給が上回るか確認しましょう

  • check_box

    就業規則や賃金規程を最低賃金額に合わせて改定しているか確認しましょう

  • check_box

    定時期(例:10月前後頃)に実施しましょう。2025年については、一部の県にて、2026年に発効をずらす例外あります。

2025年度の最低賃金引上げは、労働市場に大きな影響を及ぼすことが予想されます。企業は従業員ひとりひとりの給与の確認をし、最低賃金違反をしないことは当然ですが、正確な人件費を計算して経営の計画を立てていきましょう。

「106万円の壁」の影響

厚生労働省では、3年後としていた年収の壁が来春にも撤廃となる見通しが、今年の最低賃金上昇により出てきました。


【現行】

パートの社会保険加入は、勤務時間が4分の3未満でも、以下の 5つの要件すべてを満たす場合 は社会保険に加入義務があります。

①週の所定労働時間が 20時間以上

②月額賃金が 8.8万円以上(年収106万円以上)

③勤務期間が 2か月を超えて見込まれる

④学生ではない

⑤(例外あり) 勤務先の企業規模が一定以上

- 現在:従業員数51人以上(社会保険の適用拡大対象事業所)  

- 今後:2027年以降段階的に縮小され、最終的に中小企業も含め全面適用予定


ところが、今回の最低賃金上昇により以下のようなことが起きます。

【例】

時給1016円で週20時間働くと、1年(52週)分の収入は約106万円となります。

今回すべての都市での答申額が1016円を超えたことにより、106万円の壁を超える人が増えるとみられます。

壁を撤廃しなくても超えてしまいます。

51人以上の企業規模の段階的な撤廃により、徐々に壁は撤廃されます。

残された、「20万円の壁」を超えないように就労する動きが加速する動きが今後は出てくると考えられます。

2025年度の最低賃金引上げに向けた企業の労務対応ポイント

2025年度に予定されている最低賃金の引上げは、企業にとって避けて通れない課題です。特に人件費が経営の大部分を占める労働集約型の業種では、コスト増加が直撃することになります。そのため、効率化や生産性向上に向けた仕組みづくりが重要となります。


実際に、業務の自動化やシステム化へ投資する企業も今後増えていくでしょう。

一方で、最低賃金の上昇は、従業員のモチベーションを高める契機にもなり得ます。給与が上がることで働きがいや定着率の向上につながり、結果として優秀な人材を確保しやすくなる可能性もあります。採用活動においてもプラスに働くでしょう。(助成金が使える場合もあります)


ただし注意が必要なのは、人事制度や給与制度のバランスです。最低賃金に近い水準の従業員だけを引き上げると、他の従業員との給与差や評価基準に不公平感が生じる場合があります。そのため、給与体系全体の見直しや、職務評価に基づいた公平な報酬制度の設計が求められます。


最低賃金の引上げは、単なるコスト増ではなく、企業文化や労働環境を見直すチャンスでもあります。早めに対応を進めることで、より健全で持続可能な経営につながります。

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最低賃金の引上げは、労働者の生活向上だけでなく、企業にとっても人材育成や競争力強化のチャンスとなります。

その一方で、給与体系や人事制度の見直しが避けられず、公平性を重視した制度設計が求められます。

法令順守はもちろん、柔軟で魅力ある給与制度の構築は、採用力や企業価値の向上にもつながります。

具体的な対策や制度設計については、社労士のアドバイスを受けることが有効です。

まずは、下記フォームからお気軽にご相談ください。

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時給「バイト>正社員」 給与体系の見直しが必要になる

2025年度の最低賃金引上げが現実のものとなる中、企業はその影響に備えて具体的な対応策を講じる必要があります。最低賃金の引上げは労働者にとっては生活向上のチャンスであり、企業にとっては新たな挑戦を意味します。経営者は、この変化を受けて労働環境や給与制度を見直さずにはいられません。

まず、企業が講じるべき具体的な対応策について考えてみましょう。最低賃金引上げに備えて、現行の給与体系の見直しが不可欠です。これは単に賃金を上げるだけではなく、全体の給与制度を長期的戦略に組み込み、社内の公平性を保持することが求められます。たとえば、同一労働同一賃金の観点から、業務内容や役割に応じて柔軟な報酬体系を導入することが効果的です。これにより、従業員のモチベーションを維持しつつ、企業の競争力を強化することができます。

次に、トレーニングの重要性についてです。最低賃金の引上げに対抗するため、企業は業務効率を向上させる必要があります。そこで、従業員に対してスキルアップのためのトレーニングプログラムを提供することが非常に重要です。これは単に個人の成長を促すだけでなく、会社全体の生産性向上にもつながります。新しい制度に適応し、職場環境を改善していくためには、社内の一体感を高めることも大切です。

また、従業員とのコミュニケーションを強化することも不可欠です。引上げの背景や対応策について丁寧に説明し、意見を聴く場を設けることで、従業員との信頼関係を築くことができます。これにより、従業員は会社の方針に共感し、自発的に取り組む姿勢が生まれるでしょう。

さらに、助成金や補助金の活用も検討すべきです。行政からの支援を受けることで、最低賃金引上げに伴う負担を軽減することが可能です。特に中小企業においては、効率的に資金を運用することが経営の安定に寄与します。これらの情報を正確に把握し、活用することが求められます。

最低賃金が引き上げられることで変わる未来の労働環境は、企業にとっての改革のチャンスでもあります。適切な対応を講じ、従業員を大切にする経営姿勢を貫くことで、持続可能な企業運営が実現できるでしょう。今後の動向をしっかりと見据え、積極的に行動することが、企業の成長を促すカギとなります。

企業が取るべき対応策