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はじめに こんにちは。東京 日本橋室町に開業している社会保険労務士の田中寧子です。

今回は、過労死についてテーマにしていきますが、過労死というと、働きすぎて何かしらを原因に亡くなっていしまったのだなという、そこまでは想像がつくと思います。では、どこまで働きすぎてしまったのだろうかというと、なんとなくではなく、国で基準が決まっています。判定基準を理解し、従業員の長時間労働を未然に防止し、日々の労務管理に役立てていただけますと幸いです。

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過労死ラインとは?

過労死ラインとは

長時間労働による脳・心臓疾患(脳・心臓血管疾患)精神障害(過労自殺など)と業務との因果関係が「強く」認められやすくなる時間外労働の目安です。


以下のような時間外労働がある場合、業務と疾患との関連性が「強い」と評価されます:

発症前1か月間100時間超の時間外労働

発症前2〜6か月間月平均80時間超の時間外労働

また、月45時間を超える時間外労働が続くと、関連性が「徐々に強まる」とされます。


なぜこの基準が重要なのか

長時間労働は、脳血管疾患(脳出血・脳梗塞など)や虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症など)のリスクを高めます。睡眠時間が減少し、精神的・身体的負荷が蓄積されることで、うつ病や自殺のリスクも上昇します。労災認定の際に、このラインを超えているかどうかが判断材料になります。 


社会的意義

過労死ラインは、労働者を守るための「警戒ライン」であり、企業が働き方を見直すきっかけにもなります。働きすぎが原因で命を落とすことがないよう、働き方改革や労働時間の管理が求められています。

過労死ラインは、実は、長時間労働以外の基準もあります

2021年9月に、脳・心臓疾患の労災認定基準が改正され、過労死ラインの見直しおよび評価が明確になっています。


① 長期間の過重業務の評価強化

労働時間だけでなく,労働時間以外の負荷要因を総合して評価することを明確にされました。

従来の基準(発症前1か月で約100時間超、2〜6か月間で1か月あたり80時間超の時間外労働など)のみならず、それ未満でも近い水準であれば他の負荷要因を考慮して「業務と発症との関連性」が強いと評価できる場合があるということを明記。


労働時間以外の負荷要因の見直し/追加

新しく評価対象になる負荷要因が追加されています。具体的には、

・休日のない連続勤務

・勤務間インターバルが短い勤務(終業と始業の間隔が短い)

・事業場外移動を伴う業務や出張などの業務

・心理的負荷を伴う業務

・身体的負荷を伴う業務

・作業環境(温度環境、騒音等)

など状況的な負荷要因も例示対象に含めることが明記されました。


③ 短期間の過重業務・異常な出来事の明確化

発症直前から直近までの短期的な過重負荷や「異常な出来事」があった場合、その関連性が強いと判断されるケースが例示として挙げられています。

例:発症前おおむね1週間継続して深夜時間帯を含む時間外労働がある、重大な事故処理・救助活動等に関与するなど。


④ 対象疾病の拡充

「重篤な心不全」が新たに対象疾病として追加されました。 また,対象疾病の表記修正(例:解離性大動脈瘤 → 大動脈解離)等も行われています。

過労は精神疾患とも関連があり、労災認定基準がある

精神疾患の労災認定の位置づけ

・精神疾患は、脳・心疾患と同様に 「業務による強い心理的負荷」が原因で発症した場合 に労災と認められます。


認定基準

厚生労働省は 「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」を定めています。


認定要件

発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること

(例:パワハラ、長時間労働、重大事故の対応など)

②発病前に業務以外の要因によって発病したとは考えにくいこと

(家庭の事情、私生活の大きなストレスなどを総合考慮)

③医学的に精神障害と診断されていること


強い心理的負荷の判断

厚労省の「評価表」に基づき、出来事ごとに強度を判定。

代表的な例:

・パワーハラスメント(特に人格否定的発言、暴力等)

・過重労働(発症前1か月で80時間を超える残業など)

・重大な事故・トラブルの対応

・顧客や上司からの著しいクレーム対応

労災認定の過労死に該当する疾患

脳血管疾患

・脳出血

・くも膜下出血

・脳梗塞

・高血圧性脳症


心臓疾患

・心筋梗塞 狭心症(不安定狭心症など)

・心停止(心臓性突然死)

・解離性大動脈瘤(現在は「大動脈解離」と表記)

・重篤な心不全(2021年9月の労災認定基準改正で追加)


精神疾患(過労自殺を含む)

業務上の 強い心理的負荷(長時間労働・パワハラ・重大事故対応等) により発症するもの。

うつ病 適応障害 不安障害 PTSD(心的外傷後ストレス障害) 強い心理的負荷を原因とする精神障害 。

特に、自殺(未遂を含む)が精神疾患に起因する場合は「過労死等」に含まれると法律上明記されています。

労働基準法の理解

会社の過労死対策3つの柱

  • Point 01

    労働時間管理

    労働時間の客観的把握と、36協定に基づく上限規制の順守が基本です。長時間労働者には医師による面接指導を行い、休憩や休日を確保する仕組みを整えます。勤務間インターバル制度年休取得促進も活用し、無理のない働き方を徹底することが重要です。

  • Point 02

    健康・メンタルケア

    定期健康診断ストレスチェックの結果を活かし、早期に健康リスクを把握します。有所見者や高ストレス者への医師面接や産業医の助言を取り入れ、必要に応じて業務軽減や配置転換を行います。心身の不調を見逃さず、継続的に支援する体制が欠かせません。

  • Point 03

    職場環境整備

    業務量や人員配置の適正化を行い、特定の社員に過重な負担が偏らないようにします。ハラスメント相談窓口を設置し、パワハラやカスハラ防止を徹底します。管理職には労務管理研修を実施し、社員が安心して働ける風通しの良い職場風土を育むことが求められます。

健康を守るための労働環境構築の第一歩!チェックリストで確認しましょう!!

「過労死を防止するために最低限チェックすべき事項」

10項目

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    36協定を適正に締結・届出していますか?

    → 時間外労働の上限規制(月45時間・年360時間、特別条項でも年720時間)を守っていますか?

  • check_box

    労働時間を客観的に把握していますか?

    → タイムカード・PCログ・入退室記録を活用し、自己申告制だけに依存していないませんか?

  • check_box

    長時間労働者への医師面接指導を実施していますか?

    → 発症前1か月で80時間超、または2〜6か月平均で月80時間超の残業がある従業員への対応をしていますか?

  • check_box

    勤務間インターバル・休暇取得を確保していますか?

    → 終業から次の始業まで11時間以上の休息時間や、年休の計画的付与などを整備をしていますか?

  • check_box

    定期健康診断後のフォローを行っていますか?

    → 「要再検査」や「有所見者」に対して、産業医面談や就業配慮を実施していますか?

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    ストレスチェックを実施し、高ストレス者へ対応していますか?

    → 面接指導の勧奨や、職場環境改善に結びつけていますか?

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    ハラスメント相談窓口を設置し、機能させていますか?

    → パワハラ、セクハラ、カスハラを含め、通報者が不利益を受けない体制を整備していますか?

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    業務量・人員配置の偏りを防いでいますか?

    → 特定の社員に過度な負担が集中していないかを定期的に確認していますか?

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    管理職に労務管理研修を行っていますか?

    → 部下の労働時間把握・健康異変の早期発見・ハラスメント防止などの教育はできていますか?

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    労務リスクを定期的に監査・見直ししていますか?

    → 社内点検や社労士など外部専門家による労務監査を活用し、改善サイクルを回していますか?

この10項目を「できている/できていない」でセルフチェックすると、会社の過労死防止体制の成熟度がわかります。 特に 長時間労働・健康診断・メンタルケア・ハラスメント防止 が過労死防止の要です。

労働時間管理の重要性

過労死ラインを理解し、健全な働き方を実現するためには、適正な労働時間管理が不可欠です。

過労死のリスクを避けるためには、労働時間の適切な制限を設けることとともに、社員の健康やモチベーションを考慮した働き方の見直しが求められます。労働時間を管理することで、従業員一人ひとりのパフォーマンスを最大限に引き出すことができ、結果的に企業全体の生産性の向上にもつながります。

まず第一に、労働時間の管理は企業にとっての重要な責任です。労働者が健康であることは、企業の持続的な成長に不可欠な要素ですが、長時間労働が常態化すると、疲労やストレスが蓄積し、パフォーマンスの低下やメンタルヘルスの問題を招くリスクが高まります。適正な労働時間管理を行うことで、企業は従業員の健康を守ることができ、過労死を防ぐ取り組みとして重要な役割を果たします。

次に、適正な労働時間管理には、具体的な方法やシステムの導入が求められます。例えば、タイムカードや勤怠管理システムを導入することで、実際の勤務時間を正確に把握できるようにし、定期的に労働時間をチェックする体制を整えます。また、労働時間のデータを分析することで、長時間労働の傾向を把握し、必要な対策を行うことが可能になります。これにより、過労のリスクを未然に防止し、従業員のワークライフバランスを向上させることができます。

さらに、全社的な取り組みが必要です。適正な労働時間管理を実現するためには、経営層の理解と協力が不可欠です。経営者自らが「働く時間よりも成果重視」である文化を醸成し、従業員全員に「効率的な働き方」を促進する意識を植え付ける必要があります。これにより、企業全体で健全な働き方を実現する土壌が形成されます。

最後に、適正な労働時間管理を実践するためには、従業員一人ひとりの意識改革も重要です。自身の健康を守るためには、自らでしっかりと勤務時間を確認し、必要に応じて業務の優先順位を見直したり、適切な休憩を取ることが求められます。企業と従業員が一体となって、健全な働き方を具現化するための取り組みが求められます。

以上のように、適正な労働時間管理の方法やシステムを導入する意義は、過労死を防ぎ、企業としての責任を果たし、また従業員の健康を守るために欠かせないものです。実践的な取り組みを通じて、よりよい労働環境を築いていくことが、健全な働き方を実現する第一歩となります。

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健康診断の必要性
健康診断の必要性

健康診断は、社員の健康を管理する上で非常に重要な役割を果たしています。定期的な健康診断を実施することにより、早期に病気や健康の問題を発見することができ、社員の健康を守る手段になります。特に過労死のリスクを低減するためには、定期的な健康チェックが欠かせません。

健康診断では、血液検査や尿検査、身体測定などを通じて、職場のストレスや疲れが身体に及ぼす影響を把握することができます。特にストレスや睡眠不足など、過労による健康リスクを早期に認識し対処することができるため、健康診断は社員一人ひとりの健康を守るための第一歩と言えるでしょう。

職場環境が改善され、社員が適正な労働時間で業務に取り組むことができる環境を整えることも、結果的に会社全体の生産性の向上に繋がります。健康な社員が長期的に働くことで、企業の発展や成長に直結するのです。

さらに、定期的な健康診断を実施することで、企業自身も労働基準法に基づく健康管理の責任を果たしていることを示すことができます。適切な労働環境を整えることは、企業の社会的責任でもあり、過労死といった深刻な問題を防ぐためにも必要不可欠です。社員が安心して働ける職場環境の提供は、企業の信頼性向上にも寄与します。

このように、健康診断は単なる制度にとどまらず、社員の健康を守り、組織全体の健全性を保つための重要な施策です。定期的な健康診断を通じて、社員一人ひとりが健康であれば、企業も持続可能な成長が可能となるでしょう。

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企業にとって過労死対策は、従業員の健康を守るだけでなく、労務リスクの回避や企業価値の向上に直結する重要な取り組みです。

労働時間の適正管理や健康診断の徹底、メンタルケア体制の整備は、労災リスクを未然に防ぎ、人材の定着や生産性向上につながります。

経営を安定させ、信頼される企業づくりのために、当社労士事務所が実効性ある対策をサポートいたします。

ぜひ、お気軽に、当事務所にご相談ください。

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