お気軽にお問い合わせください

営業時間:平日 9:00~18:00

「妊娠を伝えたら『忙しい時期に困る』と嫌味を言われた」

「男性社員が育休を申請したら『昇進は諦めろ』と告げられた」

職場で起きる妊娠・出産・育児休業等に関する嫌がらせ、いわゆる「マタニティハラスメント(マタハラ)」や「パタニティハラスメント(パタハラ/育休ハラスメント)」は、男女雇用機会均等法および育児・介護休業法によって事業主に対策が義務付けられています。

近年、男性の育休取得や時短勤務が定着する一方で、現場の心ない言動や制度利用を理由とする不利益取扱いを巡るトラブルは後を絶ちません。企業が講ずべき法的義務と、実効性のある防止体制について詳しく解説します。

貴社では、法が定める防止措置および職場環境の整備が正しく運用されていますか?

マタハラ・育休ハラスメント防止チェックリスト

  • check_box

    基本方針の明文化

    就業規則や服務規律にマタハラ・育休ハラスメントの禁止条項を定めているか

  • check_box

    懲戒規定の整備

    ハラスメント行為者に対する厳正な懲戒処分規定(けん責〜懲戒解雇)を設け、周知しているか

  • check_box

    両立支援制度の周知

    産休、育休、産後パパ育休、短時間勤務、子の看護等休暇などの制度が全従業員に周知されているか

  • check_box

    相談窓口の設置と周知

    男女を問わず、妊娠・出産・育休に関する相談を速やかに受け付ける窓口が明示されているか

  • check_box

    不利益取扱いの禁止

    妊娠・出産や育休の申出・取得を理由とする解雇、雇止め、降格、減給等を明確に禁止しているか

  • check_box

    業務体制の見直し

    休業取得者の周囲の従業員に業務が過度に偏らないよう、代替要員の確保や業務効率化を行っているか

  • check_box

    プライバシーの保護

    妊娠・不妊治療歴・家庭環境などの機微な個人情報が漏洩しない管理体制が敷かれているか

妊娠・出産や育児休業をめぐるハラスメントは、従業員の心身やキャリアに影響するだけでなく、企業への信頼低下や人材の離職にもつながりかねません。企業には、ハラスメントを防止するための措置を講じることや、妊娠・出産、育休取得などを理由とする不利益な取扱いをしないことが求められます。経営者・人事担当者は、相談体制や社内ルールが実際に機能しているか、早めに確認しておきましょう。
マタハラ・育休ハラスメントとは?まず押さえたい定義と具体例

押さえておくべき「3つのポイント」

  • Point 01

    女性だけでなく「男性の育休取得」に対する嫌がらせも対象

    マタハラは女性の妊娠・出産に限られません。育児・介護休業法に基づき、男性社員が産後パパ育休や育児休業、育児短時間勤務などを取得・申請することに対する嫌がらせも同等に禁止されています。

  • Point 02

    「制度利用への嫌がらせ」と「状態への嫌がらせ」の2類型がある

    育休や産休の申請を阻害する言動だけでなく、妊娠中のつわりや体調不良で作業能率が落ちていること自体を責める言動も法律上のハラスメントに該当します。

  • Point 03

    事業主による「不利益取扱い」は法律上直ちに無効となる

    上司・同僚の言動への対策義務とは別に、会社側が妊娠や育休取得を理由に解雇、降格、雇止め、契約短縮等を行うことは法律で固く禁止されており、民事上も無効と判断されます。

マタハラ・育休ハラスメントの法律上の定義

職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントは、男女雇用機会均等法第15条および育児・介護休業法第25条によって規定されています。


「職場において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の制度利用に関する言動)により、労働者の就業環境が害されること」


対象となる労働者

正社員のみならず、パートタイマー、契約社員等の非正規雇用労働者、および派遣労働者(派遣先企業も自社の従業員と同様の措置義務を負う)を含むすべての労働者が対象です。


「業務上の必要性に基づく言動」との境界線

上司が業務体制を整えるために「育休の取得時期を確認する」「妊婦健診の日程を調整可能か相談する」といった行為は、一方的な強要でない限りハラスメントには当たりません。また、妊婦の体調を考慮して「少し休んだらどうか」と配慮する声かけも、客観的な必要性があれば正当な業務上の言動とみなされます。

背景画像
妊娠・出産・育休を理由とする不利益取扱いは禁止されています

典型例から見る「制度利用への嫌がらせ」と「状態への嫌がらせ」

厚生労働省の指針では、以下の2つのタイプに分けて具体例が示されています。


1. 制度等の利用への嫌がらせ型(男女共通)

法令で保障された制度の利用を阻害したり、利用したことに対して嫌がらせを行う行為です。

・対象制度:産前産後休業、育児休業(産後パパ育休含む)、子の看護等休暇、所定外労働の制限(残業免除)、時間外労働・深夜業の制限、短時間勤務措置、母性健康管理措置など。

・不利益取扱いを示唆する言動:「育休を取るなら次の査定はないと思え」「男のくせに休むなら辞めてもらう」などと脅す行為(上司からであれば1回でも該当)。

・利用の阻害:「育休の申請を取り下げろ」「周りに迷惑だから申請するな」と繰り返し圧力をかける行為。

・利用後の嫌がらせ:短時間勤務や育休から復帰した労働者に対し、「時短の人間にはろくな仕事を任せられない」と雑務ばかり命じる、または意図的に会議から外す行為。


2. 状態への嫌がらせ型(女性労働者対象)

女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、またはつわりなどの体調不良により能率が低下したことに対する嫌がらせです。

・不利益取扱いを示唆する言動:妊娠を報告した部下に対し、「代わりの人を雇うから早めに辞めてほしい」と告げる行為。

・状態に対する嫌がらせ:「妊婦はいつ休むかわからないから迷惑」「忙しい時期に妊娠するなんて無責任だ」と繰り返し嫌味を言い、精神的苦痛を与える行為。

絶対にやってはならない「不利益取扱い」の禁止基準


上司・同僚による嫌がらせにとどまらず、「会社(事業主)自身が妊娠・出産・育休取得を理由に不利益な処分を下すこと」は法律上固く禁止されています。


禁止される不利益取扱いの具体例

1.解雇・雇止め:妊娠中・産後1年以内の解雇(法的に原則無効)、育休取得を理由とする契約更新の拒否。

2.契約内容の不当な変更:契約期間の短縮、正社員からパートへの一方的な変更強要。

3.不利益な配置転換・降格:休業からの復帰時に合理的な理由なく役職を剥奪する、不利益な部署へ異動させる。

4.経済的・人事評価上の不利益:育休期間を超えて昇進・昇格の選考対象から除外する、休業取得を理由に賞与を不当に減額する。


※司法判断の原則(契機基準)

妊娠・出産や育休の取得から時間的に近接して(概ね1年以内等に)降格や減給が行われた場合、原則として「妊娠・育休を理由とする違法な不利益取扱い」と推定されます。これを覆すには、業務上の高度な必要性や労働者の真意に基づく自由な同意という極めて厳格な客観的証明が求められます。

相談を受けたらどう動く?初動対応と再発防止の実務

企業が講ずべき雇用管理上の措置義務


均等法・育介法に基づき、すべての事業主が講じなければならない雇用管理上の措置は以下の通りです。

  • # 01

    事業主の方針等の明確化および周知・啓発

    「ハラスメントを行ってはならない」旨の方針と、行為者への懲戒規定を就業規則等に明文化し、社内報や研修を通じて全社に浸透させます。

  • # 02

    相談体制(相談窓口)の整備

    窓口担当者をあらかじめ定め、対面・メール・電話等で利用しやすくします。ハラスメント発生時だけでなく、グレーゾーンや職場の不満段階から広く相談に対応できる体制を作ります。

  • # 03

    事後の迅速かつ適切な対応

    相談があった際は、当事者および周囲から公平に事実関係を確認し、被害者の環境改善(配置転換・謝罪の仲介等)と行為者への懲戒処分、全社的な再発防止策を迅速に行います。

  • # 04

    プライバシー保護と不利益取扱いの禁止

    相談者や事実確認協力者のプライバシー(病歴や不妊治療歴等の機微情報を含む)を守り、相談を理由とする不利益取扱いを厳禁とします。

  • # 05

    原因・背景を解消するための業務体制整備

    周囲の社員へのしわ寄せがハラスメントの引き金となるため、業務の棚卸しや効率化、代替要員の確保など、業務負担が偏らない体制を構築します。

マタハラ・育休ハラスメントを防ぐ「職場風土改善」のポイント

マタハラやパタハラは、個人のモラルだけでなく「人手不足」や「制度利用に対する不公平感」が根底にあって発生します。形骸化させない組織づくりのポイントです。


・「お互い様」の風土と業務の標準化(属人化の解消)

特定の社員しかできない業務をなくし、急な休みや時短勤務にもカバーし合えるマニュアル・チーム体制を整えます。


・カバーする周囲の従業員への配慮・評価

休業者の業務をカバーした同僚に対し、業務手当の支給や人事評価でのプラス加点を設けるなど、周囲が不満を抱かないインセンティブ設計が有効です。


・管理職に対するマネジメント教育

「育休は権利であり、取得させるのは管理職の責務である」という認識を徹底し、制度利用者との適切な面談手法を習得させます。

両立支援体制の構築は当事務所へご相談ください

育児や家庭と両立しながら安心して働ける職場環境づくりは、貴重な人材の離職を防ぎ、採用力を高めるための最重要課題です。


・育休・短時間勤務に関する就業規則が法改正に対応しているか診断してほしい

・管理職向けにマタハラ・パタハラ防止研修を実施したい

・休業取得時の業務代替や両立支援助成金を活用したい

・中立な「外部ハラスメント相談窓口」を社外に設置したい


紫峰社会保険労務士事務所では、東京・日本橋を拠点に、女性社労士ならではのきめ細やかな視点と豊富な実務経験を活かし、規程改定からトラブル予防、助成金申請までトータルでサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。

監修者

紫峰社会保険労務士事務所

スタジオ15_800px_R

代表社会保険労務士 田中 寧子


東京都社労士会中央支部所属

https://www.tokyosr.jp/member-view/?member_id=1002242&mode=2

プロフィール

【保有資格】

社会保険労務士

歯科衛生士

介護支援専門員(ケアマネ)


【経歴】

跡見学園女子大学文学部国文学科卒業

東京医科歯科大学歯学部付属歯科衛生士学校(現東京科学大学)卒業


【社労士実務経験】

① 助成金専門社労士事務所に就職。助成金だけでなく、新規開業サポートから運用、給与計算、労務監査まで、社労士業務全般を経験。

② 大手社労士法人にて、外資系企業を経験。

③ 自身の社労士事務所にて顧問契約等社労士業務、各種助成金、紹介・派遣許可申請を行い現在に至る。


【モットー】

関わった会社様の経営者様も従業員様もみんなが満足する労働環境を、みんなで一緒に築いていく。

【出典・参考資料 】

厚生労働省:『事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット』

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001338359.pdf

厚生労働省告示第312号:『事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針』(最新適用版)

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001701367.pdf

厚生労働省告示第509号:『子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針』(最新適用版)

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001701368.pdf

厚生労働省雇用環境・均等局長通達(雇均発0424第1号):『雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について』

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001695579.pdf

厚生労働省職業安定局長・雇用環境均等局長通達(雇均発0120第1号):『育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について』

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001378914.pdf

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)第9条・第15条

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73075000&dataType=0&pageNo=1

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)第10条・第25条

https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355386.pdf



▼ あわせて読みたいハラスメント関連記事

🔗 パワハラとは?該当する3つの要件と正当な「業務指導」との境界線を社労士が解説

https://sr-shihou-lp.com/tokyo/7ab52b63-c61a-43d2-9422-b429f471ee03/

🔗 パワハラ防止法で企業がやるべきこと|事業主の措置義務と罰則の有無を社労士が解説

https://sr-shihou-lp.com/tokyo/a72d4039-cc41-49c7-9aab-eefc385ff637/

🔗 カスハラ対策の義務化|企業の防止義務と悪質クレーム対応マニュアルを社労士が解説

https://sr-shihou-lp.com/tokyo/96864c07-22dd-47ad-98bb-2ab7f6dd69df/

🔗 職場のセクハラ防止対策|対価型・環境型の違いと相談窓口の運用基準を社労士が解説

https://sr-shihou-lp.com/tokyo/aba520e5-e1eb-4ffb-b7dd-f70aee935015/

Contact お問い合わせ

Related

関連記事