はじめに 東京 日本橋室町で開業している社会保険労務士の田中 寧子(たなかやすこ)です。
2025年4月1日から次世代育成支援対策推進法が改正されたことにより、くるみん認定に興味を持ち、質問されることが出てまいりました。
くるみん認定について聞いたことはあっても、あまり内容はよく知られていないのではないでしょうか。
このページでは、くるみん認定について解説していきます。
1.くるみん認定とは?
現在は、常時101人以上の従業員を雇用する企業は、従業員の子育てと仕事の両立支援等に関して行動計画(一般事業主行動計画)を策定する事が義務づけられています。この行動計画に定めた目標を達成した場合に申請すると、子育てサポート企業として厚生労働大臣の認定「くるみん認定」を受けられます。
このくるみん認定を受けるとくるみんマークを自社の広告に載せることができ、子育て企業であるPRができます。
くるみん認定には、より高い水準の取り組みを行うと「プラチナくるみん認定」されます。
また、2022年に認定基準が引き上げられたので、従前基準を満たした場合の「トライくるみん認定」が創設されました。
以上、3つの認定のいずれかとあわせて、不妊治療との両立支援に取り組んだ場合、「プラス認定」が創設されました。
2. くるみん認定を受けるメリット
くるみん認定で職場環境を劇的改善!
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Point 01
採用活動
くるみん認定は、子育て支援に積極的な企業として国が認める制度で、働きやすさの証明となります。若年層や育児世代に安心感を与え、企業イメージの向上や求人票での差別化により、優秀な人材の応募・定着に効果的です
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Point 02
従業員の定着
くるみん認定は、育児支援制度の整備と周知を促進し、従業員の働きやすさと満足度を高めます。結果として、育児による離職を防ぎ、男女問わず制度利用が進むことで、職場への定着率が向上する効果があります
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Point 03
公共調達の加点評価
くるみん認定は、子育て支援に積極的な企業として厚労省が認定する制度で、国の指針により公共調達の加点評価対象となります。ワーク・ライフ・バランス推進企業として評価され、総合評価落札方式などで受注機会の拡大に有利です
3.次世代育成支援対策推進法とは?
次世代育成支援対策推進法とは、少子化対策の一環として、子どもが健やかに育つ環境を社会全体で整備することを目的とした法律です。平成15年に成立し、令和6年の改正で令和17年3月31日まで延長されました。
【概要】
対象者:国・地方自治体・企業(特に従業員101人以上の事業主)
義務内容:子育て支援に関する「一般事業主行動計画」の策定
届出目的:仕事と子育ての両立支援、育児休業制度の整備、働きやすい職場環境の促進
認定制度:行動計画の達成状況に応じて「くるみん認定」「プラチナくるみん認定」などを取得可能
★以下ステップ1~4のPDCAサイクル確立する。
ステップ1
①育児休業取得状況及び労働時間の状況把握(追加改正:さらに数値目標の設定義務化)
②改善すべき事情の分析
⇩
ステップ2
①行動計画の策定
②社内周知
③外部への公表
④都道府県労働局長への届出
⇩
ステップ3
計画の実施
⇩
ステップ4⇒基準を満たしたらくるみん認定を申請
計画終了・効果の測定
どういった労務管理が求められるのでしょうか。
4. くるみん認定基準(2025年4月1日以降)
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雇用環境整備について、行動計画策定指針に照らし適切な行動計画を策定したこと
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行動計画の計画期間が2年以上5年以下であること
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策定した行動計画を実施し、計画に定めた目標を達成したこと
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策定・変更した行動計画について、公表および労働者への周知を適切に行っていること
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①計画期間中の、男性育休取得率30%以上
②男性育休取得率および育児目的休暇利用率50%以上であること
→①または②を「両立支援のひろば」で公表
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女性労働者(有期雇用含む)の育休取得率がそれぞれ75%以上
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月平均60時間以上の労働者がいないことに加え、①②のいずれか満たすこと
①フルタイムの労働者の時間外・休日労働の平均が30時間未満であること
②フルタイムのうち25~39歳の労働者の時間外・休日労働の平均が45時間未満であること
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①男性労働者の育休取得期間延伸のための措置(所定外労働削減の措置)
②年給取得促進の措置
③短時間正社員制度、テレワーク等多様な労働条件の整備
→①~③いずれかを目標に定め実施していること
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法や命令等に違反する重大な事実がないこと
くるみん認定は、企業が育児と仕事を両立できる環境を整えるための制度です。少子化対策や従業員のワークライフバランスを考慮し、企業が積極的に取り組むべき重要な認定です。今、企業がこの認定を取得する重要性が高まっています。なぜなら、くるみん認定を取得することで、労働環境が整備され、優秀な人材の確保や従業員の定着を促進し、企業の成長を支える基盤となるからです。

5. 労働環境改善の重要性
労働条件の整備と職場環境の改善は、企業の成長や従業員の満足度向上において不可欠な要素です。特に、くるみん認定は、企業が積極的に育児支援を行うことで、働きやすい環境を整えることを目的とした制度です。この認定を取得することで、企業は労働環境の改善を図り、従業員のエンゲージメントを高めることが期待できます。
労働条件の整備がなされていない職場では、従業員の離職率が高まり、同時に新たな人材の確保が難しくなります。また、職場環境が悪化することで、従業員のモチベーションが低下し、業務効率が悪化します。これにより、企業の業績にも悪影響を及ぼす可能性があります。従業員が安心して働ける環境を整えることは、企業の持続可能な成長にとっても重要です。
今、企業が求められているのは、育児支援だけでなく、多様性を取り入れた職場環境の整備です。くるみん認定は、そうした企業努力の一環として、社会からの評価を高める要素ともなります。実際に、くるみん認定を取得した企業では、従業員の意識が変わり、職場環境が劇的に改善された事例が多く見受けられます。従業員のコミュニケーションも活性化し、チームワークが向上することで、結果として企業全体のパフォーマンス向上にも寄与します。
このように、労働環境の整備は単なる義務ではなく、企業にとって成長戦略の一部であると言えます。くるみん認定は、その実現に向けたステップとして、企業がより良い職場環境を提供するための重要な指針となります。
6. 若年層の採用のメリット
1. 組織の若返りと活性化
若手は柔軟な思考と新しい価値観を持ち込み、組織に刺激を与えます。年齢構成の偏りを是正し、世代間のバランスを取ることで、持続可能な組織運営が可能になります。
2. デジタルスキルと適応力の高さ
デジタルネイティブ世代は、ITツールやSNSの活用に長けており、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の担い手として期待されています。新しい技術への適応が早く、変化の激しい市場環境にも柔軟に対応できます。
3. 長期的な人材育成と定着
若手はポテンシャル重視で採用されることが多く、企業文化に馴染みやすい傾向があります。中長期的な育成を通じて、将来の幹部候補や専門職として成長させることができます。
4. 価値観の多様化への対応
若年層は「安定した雇用」「ワークライフバランス」「自己成長の機会」を重視する傾向があり、企業に新しい働き方や制度の導入を促します。これにより、企業全体の柔軟性や魅力が向上し、他の世代にも良い影響を与えます。
5. 採用競争の激化と人口減少への対応
少子高齢化により若年層の労働人口は減少しており、優秀な若手人材の確保はますます困難になっています。早期に魅力的な職場環境を整え、若手に選ばれる企業になることが生き残りの鍵です。
このように、若年層の採用は単なる人手不足の解消ではなく、企業の未来への投資とも言えます。
7. くるみん取得に向けた労務管理の工夫一例
育児休業の促進
①育児休業について、管理職の周知、従業員に取得控えさせないようにしましょう。
②ハラスメントがないように、ハラスメント相談窓口を明確にして実行性のあるものにしましょう
③育休で従業員が不在になっても、他の従業員がその役割を担えるようにしておくなど、安心して休業を取らせることができる体
制を普段から確率しておきましょう。
時間外労働の削減
なぜ、月平均30時間以上(45時間以上)目標時間を超える残業が発生しているか。
原因を分析して整備していく必要があります。
8. お問い合わせ・相談窓口
企業が働きやすい職場づくりを進めるには、専門知識を持つ相談窓口の活用がとても大切です。
特に「くるみん認定」を目指す際には、制度の理解や手続きで悩むこともあります。そんな時は、社労士に相談することで、企業の状況に合ったアドバイスが受けられます。 くるみん認定を取得すると、子育て支援の取り組みが見える化され、企業の信頼性やブランド力が高まります。これが採用活動にも良い影響を与え、従業員の働きがいにもつながります。 気になる際は、以下お問い合わせフォームにご記載の上ご連絡くださいませ。